(舛添要一:国際政治学者)

 4月24日、旧優生保護法によって強制的に不妊手術を受けさせられた障害者らへの救済法が成立し、被害者に一律に一時金320万円が支給されることになった。これに合わせて、外遊中の安倍首相も「反省とおわび」の談話を発表した。

 さらに26日の閣議では、一時金の経費については2019年度予算の予備費から126億円を支出することを決めた。遺伝性疾患などを理由に不妊手術を受けさせられた人は約2万5000人、うち支給対象となる生存者は1万2000人ほどと見られている。一時金は6月末から支給されるという。

国家賠償訴訟の判決前に被害者を立法で救済

 私は、厚労大臣のときに薬害肝炎訴訟問題に直面し、衆知を集めて問題を解決したが、今回もまた同様なプロセスを経て解決への道筋を切り開いたことを評価する。あのときの薬害肝炎訴訟問題解決の経験が活かされたことを嬉しく思っている。

 薬害肝炎問題のときは、訴訟中の被害者(原告)と国の間で和解が成立したが、今回は、被害者が国家賠償訴訟を継続しており、国会が判決前に立法で救済する異例の措置を採ったのである。

 被害者の救済は時間との勝負であり、支給額、支給条件など、被害者からみれば不満の点も多々あると思うが、一刻も早く解決策を取り纏めることを優先させたのである。

 判決前だということで、救済法においては、国の責任について言及することができず、「我々は、それぞれの立場において、真摯に反省し、心から深くおわびする」という文言となっている。

 この立法の発端は、2018年1月に重度の知的障害のある宮城県の女性が仙台地裁に国賠訴訟を起こしたことにある。そのひと月後に国会で超党派の議員連盟が発足し、救済策の検討に入った。そして、日本各地で同様な国賠訴訟が提起され、今も訴訟が継続している。

 その間、国会のチームが精力的に議論し、今年3月に救済法案がまとまったのである。迅速な対応であったと言ってよい。