戦艦大和をしのぐサイズのこれら3隻の大型客船は、戦艦大和の最高速度を超えるスピードを、大西洋横断に必要な4日の間、出し続けることができたのだ。

 当時の軍艦では高速航行をこれほど長期間維持できなかった。

 もちろん、戦艦と豪華客船では役割が違うので、一概には比較できない。豪華客船は戦艦大和が持つような大砲は持たないし、敵の攻撃に耐える装甲も持たない。

 しかし、どちらがすごい船に見えるかと問われると、戦艦大和よりも巨大な3隻の豪華客船の方が立派に見える。

豪華客船は“戦果”でも大和に勝っていた

 戦艦大和よりも立派だった英仏の豪華客船。何とこの豪華客船には軍艦を沈めた実績においても戦艦大和をしのいでいたものがあったのだ。

 戦争前に就航したクイーンメリーとノルマンディーは、第2次世界大戦が始まるまでは客船として運航されていたが、開戦後は軍隊輸送船となった。

 クイーンエリザベスは完成が1940年であり、客船として運航されることなく軍隊輸送船となった。

 ノルマンディーは改造中に火災を起こし、消火しようとして大量の水をかけたところ、溜まった水でバランスを崩して横転し、そのまま復活せずスクラップになるという悲惨な最期を迎えた。

 一方、一度に1万人以上を輸送できるクイーンメリーとクイーンエリザベスは、米国から欧州へ兵隊を送り込むのに活躍した。

 1942年10月2日、クイーンメリーは大西洋上で輸送任務についていた。まだ、ドイツの潜水艦が活発に活動している時期であり、当然のことながら軍艦が護衛していた。

 護衛の軍艦は4000トンの英国海軍巡洋艦キュラソー。もともと巡洋艦というタイプの軍艦は時速55キロ以上を出すことができる高速の艦艇である。

 しかし、第1次世界大戦時に建造されたキュラソーはすでにボロ軍艦になっていた。そして、軍艦が最高速度を持続することは困難だった。この時の大西洋横断では時速46キロを出すのがせいぜいだった。