日産、ゴーン容疑者の取締役も解任 臨時株主総会

都内にある制限住宅の近くで報道陣に囲まれる日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(2019年4月3日撮影)。(c)CHARLY TRIBALLEAU / AFP〔AFPBB News

(細野祐二:会計評論家)

オマーン・ルート

 2019年4月4日木曜日未明、カルロス・ゴーン元会長は、会社法の特別背任容疑で東京地検特捜部に再逮捕された。ゴーン元会長の逮捕はこれで4回目となる。ゴーン元会長は、同年3月6日、保釈保証金10億円で108日間の勾留を終えて保釈されたが、この間、保釈条件に抵触するような行動はとっていない。ゴーン元会長は、4月11日に、保釈後初の記者会見を開く予定だったが、4回目の逮捕で再び東京拘置所に逆戻りすることになった。

 ゴーン元会長の再逮捕容疑は、2015年12月から2018年7月までの2年8カ月において、日産子会社の「中東日産」からオマーン財閥系販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」(SBA)に販売促進費などの名目で1500万ドルを送金し、このうち約500万ドルをゴーン元会長が実質的に保有する預金口座に還流させ、日産自動車に約5億6300万円の損害を与えた疑いである。

 SBAの経営者スヘイル・バウワン氏はゴーン元会長の知人であり、40社超の企業を擁する「スヘイル・バウワン・グループ」の創業者である。日産からSBAにわたった資金は総額で約35億円に上り、このうち相当額がレバノンにある投資会社「グッド・フェイス・インベストメンツ」(GFI)名義の預金口座に流れていた。GFIの経営者はSBA幹部のインド人であるが、レバノンはゴーン元会長の出身地であり、GFIの所在地も元会長の知人(故人)の弁護士事務所となっている。

 GFIに流れた金は、ゴーン元会長の妻キャロル夫人が代表を務めるレバノン法人「ビューティー・ヨット」(BY)やゴーン元会長の息子が経営する米国企業「ショーグン・インベストメンツ」などに渡っていたという。「ビューティー・ヨット」に流れた資金は約9億円で、この資金は約16億円のクルーザー購入代金の一部に充てられた可能性がある。SBA側への支出はサウジアラビア・ルートでも問題とされたCEO予備費が使われていた。また、ゴーン元会長はバウワン氏側から約30億円を個人的に借入れていたとされる。

 さて、これが現時点までに判明しているオマーン・ルートの逮捕容疑であるが、報道によれば、この逮捕容疑に対して検察関係者は、
●(今回の逮捕容疑は)「中東日産→SBA→ゴーン元会長の口座と資金還流の構図が鮮明」
●「確実に立証できるよう慎重に判断した。これなら誰からも文句を言われない内容だ」
●「逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断した。日産に5億円以上の損害を与えたことなどの事情も考慮した」
●「今回のオマーン・ルートは、金の流れを立証できれば特別背任の要件を満たすのは明らかだ」
 などと語っている。