(右田早希:ジャーナリスト)
4月3日、「程永華駐日大使が来月離任する」とのニュースが一斉に流れた。2010年2月に着任し、この4月で在任期間は9年2カ月になる。これほど長い駐日大使は、1972年の日中国交正常化以降いない。程大使は11代目の駐日大使だが、これまで最長は、6代目の徐敦信大使で、在任期間は5年6カ月だった。普通は、3年の任期を持って着任するので、たしかに「超長期体制」だった。
程大使がこれほどの「最長不倒」を誇った理由として、日本のニュースは「余人をもって代えがたい優れた人脈と実力を兼ね備えた大物大使だったから」と解説していた。
だが、これには違和感を覚えた。程大使と身近に接してきた日本人であるほど、「それは違うでしょう」と思ったのではないか。
個性派ぞろいの中国外交部の中で珍しい「凡人」タイプ
程永華大使が9年間も続いた最大の理由は、凡人だったからである。そのような表現が大使に失礼ならば、「偉大なる凡人」と呼んでもよい。
中国の外交官と接していると、日本の外交官に較べて一般に個性の強い人が多い。印象が強烈で、一度会ったら忘れないような猛者たちばかりだ。
そうした烈烈たる中国外交部の外交官の中にあって、程永華大使ほど没個性のタイプはいない。程氏は大使に就任する前にも、東京・六本木の中国大使館で、二等書記官、一等書記官、参事官、公使などを務めていたが、いつも上司の指示通り、ちょこまか動き回る書生のような存在だった。