しかし、この機体も前述のとおりウズベキスタンで作っていた主翼を作ることができない。そうなれば、主翼の生産を立ち上げなければならないのは明らかである。

 にもかかわらず、主翼生産を立ち上げないまま、開発完了と量産開始を宣言してしまい、キエフのアントノフの工場で胴体の製造を始めてしまった。冗談のような話だが、翼のない飛行機を作り始めてしまったのだ。

 また、今回紹介したAn-124やAn-225の製造再開は何度も報道されてきたが、一度たりとも具体的な動きが伴うことはなかった。

 アントノフは、今年1月にも、米CNNの取材に対しAn-225を完成させると言っている。こちらも同じ主翼の生産不能やロシア製装備品の調達不能といった問題を抱える。

 これを克服しない限り、完成は不可能であるが、そうした懸念に対する対策の説明はない。

 その前はAn-225 2号機を完成させたうえで中国で量産すると言っていたが、具体的には何も進まなかった。さらにその前は2号機を完成させてロシア空軍に販売すると言っていた。

 アントノフは実にいろいろなことを思いつくのだが、どれ一つとして現実的な検討や本当に飛行機を作るための実務が伴わない。そうしている間に、新しいことを思いつく。今でも新しい派生モデルの構想は良く出てくる。

 アントノフでは航空機生産を復活させるために何が必要か現実的に判断し、実現のため必要なことを組織的に行っていくということが全くできなくなっている。まともな実務を組織として進められるようになるまで、航空機を作ることは無理だろう。

 An-124やAn-225は、現在の日本の航空産業が総力を上げても完成させるのは困難なほど高度な航空機だった。

 そのようなものを開発・生産したアントノフほどの企業が、翼のない航空機を作ったりしているほど凋落したのは信じられない。

 そして、今では細々と続いていた生産もほぼ止まり、現時点では再開の可能性は低い。もともと持っていた技術力、開発力が素晴らしかっただけに非常に残念である。