米ボーイング社が製造する最新鋭の小型旅客機ボーイング737MAX8型機の墜落事故が相次いだことで、各国の航空当局が同型機の運航を一時停止した。737MAXはこのところ需要が急拡大している小型機の戦略製品だったことから、ボーイングにとっては大きな打撃となっている。
一方、同社のライバルであるエアバスは、超大型機エアバスA380の生産中止を決定した。小型機へのシフトが急ピッチで進んでおり、超大型機に対するニーズが大幅に低下したことが原因である。
世界の航空輸送はグローバル化の進展や新興国の経済発展によって活況を呈しているが、航空機メーカーは十分に状況に対応できていない。今回の事故の原因次第では、市場の混乱にさらに拍車がかかるだろう。(加谷 珪一:経済評論家)
最新鋭の機種が立て続けに墜落
ボーイング737シリーズは1967年の初飛行以来、累計で1万機が生産されたベストセラー機である。MAX8型機はシリーズの最新モデルで、2017年から世界の空を飛び始めている。
ところが昨年(2018年)10月、同型機を使ったインドネシアのライオン航空610便が、ジャカルタを離陸直後に墜落し、乗客乗員189人が死亡するという事故が発生。今年の3月10日には、エチオピア航空302便がエチオピアの首都アディスアベバの郊外で墜落。乗客乗員157人全員の死亡が確認されている。
最新鋭の機種が半年の間に連続して事故を起こしたことから、欧州航空安全機関はEU域内におけるボーイング737MAX8型機およびMAX9型機の運航を一時停止すると発表。中国の航空当局も、各航空会社に対して737MAXの運航停止を求めた。
当初、米国の航空当局であるFAA(米連邦航空局)は運行停止の措置を実施しない方針だったが、事態を重視したトランプ大統領が大統領令を発動し、とうとうFAAも運航停止を余儀なくされた。主要3カ国の航空当局が運航停止を決定したことで、事実上、同型機は空を飛ぶことができなくなった。