中国の国内総生産(GDP)が日本を抜いて世界第2位に躍り出た。報道によると、中国の2010年のGDPは名目で5兆8812億ドルになり、日本が5兆4023億ドルであることから、4800億ドルほど日本を上回ったことになる。

 いつかは、このようなことになると分かってはいたものの、多くの日本人は、このニュースを複雑な思いで聞いたことであろう。

中国から報告されたデータをそのまま公表しているFAO

 だが、中国が発表するGDPの数字は正しいのであろうか。筆者はそれを疑うべき根拠を持ち合わせていないが、ここでは自分が関わってきた農業に関わる分野から、中国の統計は、まずは疑ってかかった方がよいと思っていることを紹介したい。

 日本の農地面積は459万ヘクタールである。これは、農水省のウェブサイトに記載してある。農地面積は、農業を語る上で最も基礎的なデータである。多少の誤差はあっても、おおよそのところにおいて、日本のデータは正しいと思っている。

 ところが、中国については、正確な農地面積が分からないのである。

 中国はGDPが世界2位の国である。その国の農地面積が分からないことなどあるものかと言う人もいよう。FAO(国連食糧農業機関)は、中国の農地面積を1億2254万ヘクタール(2008年)としている。国連機関が公表しているのであるから、一般の人はこの数字を信用している。

 ここで、FAOデータについて少し説明しておきたい。FAOは国連の機関だから、原則として各国が報告してきた数字を、FAOデータとして公表している。

 一部の開発途上国はデータを作ることができないために、FAOの職員が推計していることもあるが、中国については中国が報告した値である。

 ただ、この中国が報告した値は、農業の専門家が見ると、かなりおかしい。

 FAOの統計は1961年から始まっているが、その時点の農地面積は1億525万ヘクタールであった。つまり、中国の農地はこの50年間で16%も増えたことになる。