(高野 研一:コーン・フェリー日本共同代表)

◎連載「日本の活路を開くデジタル革命」バックナンバー
(1)「産業革命に追いついた日本、デジタル革命でも再び」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55315
(2)「日本企業が『デジタル破壊』から身を守る唯一の方法」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55463
(3)「デジタル革命が導くビジネスモデルの7つの方向性」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55611

 日本企業がデジタル革命に適応して生き残っていくために、いよいよ終身雇用の価値観を変えるべき時が来たのではないだろうか。

 産業革命とは、エンジンやモーターの登場により、生産物流システムが根底から変わり、巨大工場や大企業が台頭した時代であったということを連載の第1回で述べた。日本企業がそこで大成功できた理由の1つに、終身雇用の価値観があったことは間違いないだろう。

 巨大工場を成り立たせようとすると、大勢の人を採用し、教育し、定着させる必要がある。終身雇用制は、職の安定を提供することで、企業への帰属意識を高め、お互いに協力してライバル企業に打ち勝とうとするモチベーションを生み出すことに成功した。それが戦後の復興と相まって、日本の驚異的な経済成長を可能にしたといえよう。

 ところが、経済成長が止まると、今度は終身雇用制の弊害が目立つようになってきた。人が退職しないため、管理職ポストが空かず、昇進昇格のスピードが遅くなったり、雇用削減を伴うような事業構造改革がやりにくくなってきている。その結果、有能な学生は、将来性の見えない大企業に就職することを敬遠するようになっている。

 そこにいま、デジタル革命が起こり、既存のバリューチェーンのスクラップ&ビルドが始まったのだ。本来であれば、価値を生みにくくなった機能は自らスクラップし、新たに価値を生む機能の獲得に動かなければならない。しかし、人の入替を伴うようなスクラップ&ビルドには、終身雇用制の下では誰も前向きになれない。

 また、デジタル革命の時代には、大企業に代わってプラットフォーマーが台頭し、その周りにグローバルなエコシステムが形成されていくことは連載の第2回で述べたとおりだ。エコシステムとは「勝ち組企業連合軍」のことを指す。競争を勝ち抜いた企業はエコシステムの中に留まり続けるが、敗れた企業はエコシステムから退出していく。そうして、プラットフォーム自体が絶えず必要な機能、不要な機能をスクラップ&ビルドし続け、自己革新していくことができるのだ。