日本は産業革命の波に乗り遅れながらも、戦後、世界第2位の経済大国に発展することができた。デジタル革命においてはどうなるのか?(写真はイメージ)

(高野 研一:コーン・フェリー日本共同代表)

 デジタル革命は日本にとって「革新」になるのか、それとも「破壊」になるのか?

 その答えは歴史の中にある。

 筆者はいろいろな物事の歴史を探ることが趣味である。そうやって歴史を調べていると、ある特定の時期に、その後の世界を大きく変える引き金となるような出来事や発見、人物などがいたことがわかってくる。例えば、数学の世界においては、「ゼロの発見」や「位取り十進法」「微分積分」の創出が、その後の歴史を大きく変えている。クラッシック音楽の世界においては、バイオリンの発明や、ベートーベンの登場が、やはり音楽の歴史を変える転換点になった。

 また、人類の歴史を遡っていくと、7万年ほど前に、人類の脳が少し進化し、それがその後の飛躍的発展につながっていったことが分かっている。脳が少し進化したことによって、その後、人類は「思想」をあやつれるようになったのだ。群れをつくって生活する動物においては、群れの大きさと脳の容量の間には正の相関があることが分かっている。その理論を当てはめると、人間の脳の大きさでマネジメントできる人数は、150人が上限ということになる。しかし、実際には人間は数千人、数万人を超える数の組織をマネジメントしている。それを可能にしているのが、「思想」を操る能力なのだ。

 顔と名前を覚えて、「どうだ、頑張ってるか?」といって肩をポンポンと叩く。こんなやり方でマネジメントできるのは150人が限界なのだろう。しかし、人間は思想を共有する術を身につけたことで、より大きな組織のベクトルを合わせられるようになった。それが土木工事や戦争において圧倒的なパワーを生み出すことにつながり、ホモ・サピエンスの異常なほどの発展を可能にしたのだ。

 さて、デジタル革命の話に戻ろう。

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」や「デジタル破壊(Digital disruption)」といった言葉が新聞や雑誌をにぎわしているが、いったいデジタル革命は、日本にとって吉と出るのだろうか、凶と出るのだろうか。

 それを占う上で、過去に起こった数百年単位の「革命」において、何が引き金となり、その後何が大きく変わったのかについて調べてみた。