朝日新聞のデジタル版によると「代々木公園(東京都渋谷区)の占用許可を都から得ている常設の屋台を警視庁が調べところ、全7店舗の出店者計7人について指定暴力団極東会系の関係者と分かったとして、同庁は28日、東京都に連絡した。都は出店者に聞き取りし、占用許可の取り消しを検討する。7店舗のうち3店舗は現在営業していない。都によると、都立公園で営業中の屋台に関し、暴力団の関与を理由とした占用許可の取り消しは極めて異例だ」とされる。
同様の取り締まり強化が、他所の地域に飛び火しないことを祈るばかりである。テキヤへの締め付けは、誰にとっても益がない。たとえば、筆者の生活する福岡市では、九州の夜の街を代表する中洲のイベント「中洲まつり」がある。このイベントも、数年前からテキヤの屋台が姿を消し、素人の飲食ワゴンなるものが台頭した。結果、祭の殷賑が半減し、博多っ子も「今日は何がありよっと? あ、中洲まつりね」という具合である。
縁日のルールの根底には親分の顔がある
日本の原風景を継承してきた縁日の仕掛け人「テキヤ稼業」の陰には、その祭りを支える親分と、若い衆の並々ならぬ苦労がある。露店で食中毒を出さないため、調理プロセスや衛生管理に目を光らせるのは、親分の務めである。縁日の後の掃除――参道に輪ゴムの一本落ちていないように境内を掃き清めるのも庭場を仕切る一家の責任である。
テキヤの商売には、それなりのルールがある。そのルールの管理人は、庭場の親分である。親分の顔にかけて、庭場の若い衆も身体を張ってその秩序を保つし、旅人も在所の親分の顔に泥を塗るようなことはしないよう、自前の若い衆を戒めるのである。
たとえば、フライドポテトとして割られた場所で商売を始めたとしよう。この稼業人は考えるかもしれない。「折角フライヤーがあるのだから、アメリカンドッグもできるし、唐揚げもできる。よっしゃ、一石三鳥やで」と。そうすると、近隣のアメリカンドッグ屋や、唐揚げ屋から苦情が出る。しかし、直接、文句を言うと喧嘩になる恐れもあるし、そうなったら、庭場の世話人に迷惑を掛けるから、とりあえず本部事務所にケツを持ち込む。
すると、親分は、若い衆にナシ(話)をつけて来いと命令する。早速、若い衆が一石三鳥の店主を諭して、フライドポテトに専念してもらうという寸法である。日本人でないとこうした道理が分からない。だから、外国人の経営する露店が、縁日では見掛けられないのである。