「ゲノム編集」という言葉の響きに酔ってはいけない。

 大企業の安全神話が崩れ、ベンチャー企業の存在感が増していく中、ベンチャー業界を取り巻くさまざまな論説が流れている。だが、当のベンチャー企業側は、その現状と行く末をどのように捉えているのだろうか。戦略コンサルタントを経てバイオベンチャーを創業した、ちとせグループCEOの藤田朋宏氏が、ベンチャー企業の視点から日本の置かれた現状を語っていく。(JBpress)

【第4回】「そのバイオプラスチックで本当に生態系を救えるか?」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54914)

耳ざわりのいい言葉が流通する理由

 あちこちの技術分野の未来に詳しそうな意識高そうな人が、最先端技術が生み出す近未来の社会のあり方について断定口調で語っているのを「カッコいい」と思う層が、年代に関係なく、今の日本社会では着実に増えているように感じています。

 彼らのような実効力の無い扇動業に憧れるのって、若い頃にありがちな過ちのうちのひとつ(中二病というより、大学2年生にありがちな大二病というか)だと僕は感じます。

 上では世代に関係なくと書きましたが、今の日本はむしろ、若い人に地に足が付き過ぎちゃって達観しすぎている人が多く、逆にバブル時代に青春時代を過ごした年輩の層に、いつまでもこの扇動業に振り回される大二病をこじらせてしまっている人が多いのが、今の日本の姿なのかもしれません。

 技術分野が細分化され、どの技術がどれくらいの確実性でいつ頃実現可能か、専門の人の中でさえも意見が割れ議論が続けられている現在の世の中において、さまざまな技術分野を幅広く見通して、今後100年の技術動向を正確に言い当てられる人が存在するわけはありません。天才とか努力とかいうレベルを超えている話ですから。

 しかしながら、将来に対して不安な人が多い社会だからこそ、それっぽい専門用語を散りばめながら、「あたかも何でも知ってるぜ風」に言い切れてしまう扇動業のニーズが高まっているのが今の社会の姿なのでしょう。

 と、ここまで、技術を語ることで社会を扇動する役割を担っている人に対してネガティブに受け止められるような書き方をしていますが、彼らがどんなに根本的なところで、技術の理解を間違えていても、彼らが語る技術動向の大筋が、目先の金儲けを企む薄っぺらい輩のためだけでなく、その技術分野で悪戦苦闘する技術者を支えるものになるのであれば、「時代の空気の代弁者」として、それはそれで社会のためになる役割なんだろうなと、嫌味ではなく思ってます。