大企業の安全神話が崩れ、ベンチャー企業の存在感が増していく中、ベンチャー業界を取り巻くさまざまな論説が流れている。だが、当のベンチャー企業側は、その現状と行く末をどのように捉えているのだろうか。戦略コンサルタントを経てバイオベンチャーを創業した、ちとせグループCEOの藤田朋宏氏が、ベンチャー企業の視点から日本の置かれた現状を語っていく。(JBpress)
【第3回】「起業するなら『誰かに褒めてもらおう』と思うな!」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54587)
この連載では「一見、環境や社会そして科学の発展のために良いことをしているように見えるベンチャーキャピタルの中には、その存在が日本の科学技術の発展を阻害している人たちがいる現実」を書いてきました。
ネット系のベンチャーキャピタリストと話すと、「バイオ業界にはそんなに悪いやつがいるの?」とか「いくらなんでも10年以上前の話でしょ」とびっくりされます。同じベンチャー業界でも他の業界のことは分かりませんが、少なくともバイオ業界では、平成も終わろうとしている今でも普通に見かける光景です。
もちろん言うまでもなく、日本のバイオ業界のベンチャーキャピタルの中には、社会のためにも科学の発展のためにも立派な仕事をされている人も大勢います。社会や環境を良くするためにしっかり仕事をされている方々からしたら、前述のような「科学者や研究者を食い物にするのが仕事」と言う輩の存在は迷惑でしかありません。
しかし、ベンチャーキャピタル業界とは、お互いに情報交換しながら協調投資するなど、同業者とは競争関係ではなく協働関係にある業界です。なので、同じ業界の中から「流石に、あの会社のやり方は酷い」とは声を上げて言いにくいという側面もあるように感じます。
日本のベンチャー業界を少しでも健全なものにして、世界視野で見たときの日本の競争力を上げるためにも、私のような、いろいろありながらもVC投資のフェーズを既に通り抜けた(?)立場の人間が社会に対してできる責務だと勝手に思って、今回もバイオ業界周りで起きている現実について書いてみたいと思います。
急に注目されはじめたバイオプラスチック
今回は、バイオプラスチックをテーマにします。SDGs(持続可能な開発目標)やバイオエコノミーなどの文脈で、近年またバイオプラスチック関連が脚光を浴び始めています。そこで、そもそもバイオプラスチックとは何ぞやというテーマから、今の技術ベンチャーの景色に触れてみたいと思います。