でも、バイオプラスチック製品ってそれなりの頻度で目にしますよね? 現在、市場でよく見かける「100%植物由来プラスチック」と呼ばれているものの多くが「その作り方しているのに、環境に良いって言っちゃう?」と感じる作り方で作っているものなのです。

 こういった、環境に良いとは思えない製造方法の一例として、エタノールを原料にする手法が挙げられます。

 詳細をできるだけ端折って説明すると、このプロセスはエタノールを作るところから始めます。原料である食用の糖を発酵させてエタノールを作ることは、人類が数千年前から行う酒造りの手法なので、技術的に難しいポイントは全くありません。

 次に、このエタノールに莫大なエネルギーを投入して、エタノールを化学的に変換してプラスチックの原料を作るという手法です。

 確かに、この例のような、石油から作るよりも環境に対して悪影響が大きそうな作り方をした場合でも、この“バイオプラスチック”の原料は100%植物(食べられる糖です)由来であることは嘘ではありません。しかし、既に“本物の”バイオプラスチックを展開しようとしている人や、今から本気で環境のためになる開発をしたいと考えている人々からすると、「それを展開することに時間とお金を使って何か意味があるの?」と言いたくなるようなことになっているのです。

 そしてもちろん、この作り方をしたからといって、生分解性を持つわけでもないのは言うまでもありません。海洋に漂うプラスチックゴミに生存を脅かされている海亀さんや海鳥さんたちを救うことは、全く関係のない話なのです。

バイオベンチャーにはびこる悪循環

 ここで私が声を大にして指摘したいのは、この手法は技術的に難しいことが何にもないので、環境に優しいといえる現在開発中のバイオプラスチックと比較すると、莫大なエネルギーを消費するものの、経済的には現時点では、はるかに安価に生産できてしまうということです。

 その結果、何が起こるかというと、もし今、世界中の環境意識の高い人が「少々高くても良いから、バイオプラスチックを今すぐ積極的に導入しよう!」と叫べば叫ぶほど、「これを導入しても、化石資源から作るより環境に悪そうだけどなぁ」というタイプのバイオプラスチックの導入ばかりドンドン進むことが、目に見えているのです。