フィリピンが実効支配するパグアサ島

 アメリカが2隻の駆逐艦(「スプルーアンス」と「プレブル」)を南シナ海・南沙諸島に派遣し、ミスチーフ礁とセコンド・トーマス礁それぞれの沿岸から12海里内海域を通航させた。1月の西沙諸島での実施に続く、南シナ海での「公海航行自由原則維持のための作戦」(FONOP)の実施である。

 オバマ政権が躊躇しながらも海軍に実施を許可して以来、アメリカ太平洋艦隊は南シナ海で断続的にFONOPを行ってきた。

 FONOPの建前は特定の国を支援したり特定の国を恫喝するといった軍事作戦ではなく、国際海洋法秩序の遵守を呼びかけ、著しい違反に対しては「アメリカとしてはそれなりの対処をする可能性がある」という姿勢を示すための外交的作戦とされている。したがって、これまでのFONOPは、南沙諸島や西沙諸島を巡る領有権紛争当事国間での具体的な動きに即応しての軍艦派遣というわけではなかった。

 しかし、今回のFONOPは若干様相が異なっている。フィリピンと中国の間で島の領有権を巡って緊張が高まっている中で実施されたFONOPだからである。

 フィリピンが実効支配しているパグアサ島で、フィリピンによる水路掘削作業と埋め立て作業が開始された。それに対して、中国は海軍艦艇や海上民兵漁船を派遣して露骨に軍事的威嚇を強めている。そうした状況下で今回のFONOPは実施されたのだ。

南沙諸島のパグアサ島の位置(Googleマップ)