日本国民に求められる覚悟と備え

 文在寅政権は、このような将来のバランス・オブ・パワーの変化を見越し、優位になるとみている北朝鮮や中露などの大陸勢力側にすり寄ることで、国民がいまだに太平の夢に酔い国防努力を怠っている日本を、恫喝や侵略により屈服させて隷属国扱いにできるとみているのかもれない。

 韓国がいま日本に対し、居丈高な姿勢を取っているのは、文政権がそのような見方に立っている表れとみることもできよう。

 いずれにしても日本にいま求められていることは、防衛費を対GDP(国内総生産)比で2%以上にするなど、少なくとも世界標準並みに真摯な防衛努力を行い、隣国から侮られない自立的防衛力を早急に作り上げることであろう。

 同盟関係も自立的防衛力なしには成り立たない。

 米国が今後、在韓米軍を削減あるいは撤退させる可能性は否定できない。ドナルド・トランプ大統領は、米朝首脳会談後の記者会見でも、「今はまだその時ではない」が、将来はあり得ることであり、「望ましい」と述べている。

 米国は米国の国益に基づき行動するのであり、日米の国益は常に一致するわけではない。また、ともに同盟国である日韓間の対立に際し、米国が日本側に立つとも限らない。

 さらに、統一朝鮮と中国、場合によりロシアまで敵に回して、日本の危機に際し即時に日本の期待する規模の米軍を派兵してくれるという保証もない。

 新しい『日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)』では、日本の防衛は自衛隊が「主体的に実施する」ことになっている。米軍は自衛隊を「支援しおよび補完する」立場にある。

 日本は、バランス・オブ・パワーを回復し、韓国のみならず周辺国から侮られることのない、侵略すれば相応の損害を被ると確信させられる確固とした抑止力と、有事にも戦い抜き、勝利できるだけの反撃力、継戦能力も含めた、実のある戦力を早急に構築しなければならない時にきている。