このような事態に至れば、現韓国政府と交渉を続けても実効性のある成果が得られるとは期待できない。

 我が国としても、軍事的対応も考慮しなければならなくなり、韓国を敵性国とする前提で防衛諸計画なども見直さねばならないであろう。

冷静に比較考慮すべき軍事的バランス・オブ・パワー

 しかし防衛諸計画の策定において最も重要な点は、彼我の相対的な戦力バランスを考慮したうえで、与えられた資源で達成可能な目標を選定し、合理的な方法でその達成を図らねばならないという点である。

 感情論や願望で防衛諸計画を論じ、それに基づき行動すれば、戦う前から敗れているに等しい。

 最新の『平成30年版防衛白書』によれば、日本の陸上自衛隊は14万人、韓国の陸上兵力は海兵隊2.9万人も含め51.9万人、その比率は韓国軍が3.7倍の優位にある。

 海軍については、海上自衛隊が135隻48.8万トン、韓国海軍は240隻、21.5万トンである。韓国は隻数では1.78倍あるが総トン数では0.44倍の劣勢である。

 空軍の作戦機数については、航空自衛隊と海自の固定翼作戦機を含め400機、韓国が640機と、1.6倍の優勢である。

 質的な面も考慮すれば、日本側は地上兵力では劣るとしても、海空軍は優勢であり、韓国軍にとり、着上陸侵攻により我が国の国土の一部を占領確保することは容易ではないと思われる。

 しかし、問題は戦い続ける継戦能力にある。日本の予備自衛官定員数は平成30年3月末現在で、4万7900人に過ぎない。

 日本には強制力を伴った物資・輸送などの役務・エネルギー・施設などの動員制度もない。装備品の緊急生産能力、武器・弾薬の備蓄も限られている。

 他方の韓国は、陸軍21カ月、海軍23カ月、空軍は24カ月の兵役期間があり、その後8年間は「予備役」となり、それから40歳までは「民防隊」として服務することが義務づけられている。

 1990年時点で予備役と民防隊の総数は350万人以上に達した。予備役の総数は1990年時点で陸海空を合わせ約124万人が登録されていた。