しかしトランプ大統領の、同盟国により多くの防衛負担の分担を求めるという主張も、「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領としては、当然の要求と言えよう。

 米国が9.11の衝撃の中、一存で始めた戦争とはいえ、その後の米国の重すぎる負担に米国自らが耐えかねている現状に対し、価値観や体制を共にし、現秩序から受益している諸国が応分の負担をすべきだという主張は、国際の平和と安定の維持という視点から見ても、公正な見解と言えよう。

 またトランプ大統領のロシア政策、イラン政策についても、それなりの合理性が認められる。

 ロシアはクリミア半島の併合とウクライナ問題をめぐり欧米の経済制裁を受け、中国への接近姿勢を強めている。

 しかし米国の死活的国益を侵害するに足る経済力、軍事力、技術力を急速に伸ばしている国は中国であり、ロシアではない。

 ペンス演説に表明されているように、米国の主敵が中国であると見定めて、米中貿易戦争を始めるなど、対中対決姿勢を明確にしているトランプ政権としては、ロシアを追い詰めて中国側に追いやるのではなく、ロシアに譲歩姿勢を示して、中露を分断するのが外交戦略としては、より賢明であろう。

 ロシアのGDPは韓国以下であり、中国の8分の1に過ぎない。

 かつロシア経済は資源依存から脱却できず、原油価格に大きな影響を受ける。シェールオイルなどの技術提供と交換にロシアを親欧米路線に転換させる可能性もあり得る。

 またイラン問題については、米軍のシリアからの撤退に伴い、中東の北部では、イラン、イラク、シリアというシーア派優位の連携体制が強まることになろう。

 イラクも人口の6割がシーア派であり、米軍が削減・撤退すれば中央政府も国軍も分裂し、スンニー派が分離独立するかシーア派に制圧されることになる可能性が高い。

 クルドについては、内陸部にあり兵站支援が困難で、シーア派連合とトルコに挟まれれば、長期にわたり武装抵抗を続けることは困難とみられ、米国としては支援を断念せざるを得ないであろう。

 ただし、イスラエルを通し、武器援助を行い支えることはできるかもしれない。