思い起こせば、戴正呉社長がイントラネットで社内向けに発した2017年最初の「社長メッセージ」には、次の様に書かれていた。
<IoT関連技術、OLEDに加えて、新たな未来を創造する「次世代ディスプレイ」、「8K Eco System」関連技術など、将来のシャープの核となる技術への開発投資を積極的に拡大していきます>
この中に登場する「OLED」とは有機ELのこと。まさにこの言葉を実現すべく、有機ELへの開発投資を行い、今回、自社製の有機ELパネルを使ったスマートフォンを上市したのだ。
「世界最軽量」となる146グラム
満を持してシャープが市場に投入した有機ELスマホは「AQUOS zero」。IGZO液晶を使った「AQUOS R2」と並ぶフラッグシップ機種という位置付けだ。
「AQUOS zero」の大きな特長はその「軽さ」だ。ディスプレイのサイズが6.0インチの「AQUOS R2」の重量が約181グラムなのに対し、「AQUOS zero」は6.2インチと大型化しているにも関わらず、重量は約146グラムと大幅な軽量化に成功している。
シャープによれば、 画面サイズ6インチ以上で、電池容量が3000mAhを超える防水(IPX5以上)対応のスマートフォンにおいて世界最軽量という。キャッチコピーはズバリ、「世界最軽量モンスター」だ。
この146グラムという重量は、ディスプレイサイズが同程度の他社製スマホと比較して、約40~50グラム軽い。この軽量化を実現するため、有機ELパネルの採用以外に、構造部に一般的なアルミニウムではなく軽量のマグネシウムを使用、背面には鉄の5倍の強度があるとされるアラミド繊維を採用した(【写真2】右端)。
そして肝心の有機ELパネルだが、今までスマホ用のパネルは、サムスン電子のほぼ独占状態で、日本企業はサムスンから購入して組み込むしか方法が無かった。日本では2018年11月に、ソニーが、初めて有機ELのスマホ「Xperia XZ3」を発売しているが、この有機ELパネルもサムスンから購入したものだ。ディスプレイは6.0インチ、重さは約193g。この数字と比べてみると、先ほどの「AQUOS zero」がいかに意欲的な製品なのか、分かるだろう。