周知のように、その後シャープは台湾の鴻海精密工業の出資を受け経営再建に取り組んだ。そして2018年3月期の決算では、営業利益901億円と、2007年以来10年ぶりの全四半期で黒字を出し、見事にV字回復を印象付けた。
そこでシャープは、満を持して、3年ぶりにディスプレイ戦略を発表したのだ。舞台は、2018年12月に幕張メッセで開催されたファインテックジャパン2018。そこでは、世界最軽量のシャープ製有機ELスマホの技術の一端を明らかにした。
ディスプレイ戦略披露で示した「液晶・有機EL両面作戦」
開催初日の基調講演を行い、「シャープ再攻勢」の狼煙を上げたのは、ディスプレイデバイスカンパニー副社長の伴厚志氏だった。ちなみに、伴氏、前述の水嶋氏、そして私は、シャープ天理液晶工場の大部屋で机を並べた仲間でもある。
2004年に大学の教員になるまでシャープで太陽電池や液晶の研究に従事してきた私は、今年7月、戴正呉社長と面談する機会を得た(詳細は『シャープ白物家電撤退の衝撃、これが戴社長の真意だ』(https://post.jbpress.ismedia.jp/articles/-/53765)参照)が、その時に戴社長はこう話していた。
「ビジネスモデルを変えます! ハードウェアだけではだめです。プラットフォーム、AIoT等をトータルに考えていきます」
ファインテックジャパンの基調講演の場で伴副社長が語ったのは、まさにこの戴社長の基本方針を具現化するディスプレイ戦略だった。
では、ファインテックジャパンで伴副社長はどんな戦略を語ったのか。
「ディスプレイ業界を取り巻く環境は、スマートフォン・テレビのコモディティ化が進み、中国企業も台頭してきている。この様に社会はドラスティックに変化しているため、ディスプレイに求められる性能も変わる。この変化に対応できる企業が生き残る。
これからの社会は、5Gの普及、AIの進化が起こる。
この変化に対応するシャープのビジョンとして、『8Kエコシステム』『人に寄り添うAIoT』を掲げている(注:AIoTは、AIとIoTを統合したシャープの造語である)。
このビジョンを基に、ディスプレイの将来展望として、単なる性能追求・規模の追求では限界があり、新たな価値軸が求められる(【図1】参照)。
そして、『5G、AI時代のディスプレイ』には、次の性能が必要である。
①情報を最適な形で表示する、②情報を生活と調和させる」