バイオプラスチックに関しては、少なくともここ数年の間に何か劇的な技術的な進捗があったわけではありません。また、海洋に放出されたプラスチックが生態系にとんでもない悪影響を与えているのも、近年急に始まったことではありません。ですが、“どういうわけか”“急に”、バイオプラスチックに対する注目が集まっているのです。

 バイオプラスチックに世界的な関心が集まること自体は、私はとても良いことだと考えます。化石資源がまだまだ健在なうちに、太陽のエネルギーと二酸化炭素から、人類の生活に必要な素材を、経済合理性が成立する形で生産するシステムを得る必要があるからです。

 しかし、近年の少し不自然なくらい急速なバイオプラスチックへの注目の高まりに、私は妙な違和感を感じています。このままだと、またいつものように、“科学の発展や環境保全には興味がないからこそできる投資”を行う輩だけが儲かるだけで、結果的に、科学技術もバイオプラスチックの導入も期待していたほどは進まないという結論になる予感がしているのです。

 そもそも、「バイオプラスチック」とはなんなのでしょう。ちょっと調べれば、既に世界中のさまざまな公的団体が定義を発表しているのがすぐ見つかります。また、「バイオマスプラスチック」や「生分解性プラスチック」のような近縁の単語も存在していて、それぞれに定義がなされています。

 しかし、バイオ業界とは関係のない一般的な社会におけるバイオプラスチックという言葉の使用状況を見ると、人によって言葉の使い方があまりにもバラバラであることも分かります。

 ですので、本稿においては「定義はされているのだが、定義があまり浸透していない」と整理させてもらいます。従って、本稿においては全てふんわりとバイオプラスチックと呼ばせていただきます。(きちんと言葉の定義を整理されて普及に努力されている団体の皆さま、ごめんなさい)

「バイオ」と「生分解性」は別

 では、一般的に、バイオプラスチックという文脈で語られているものは、何を指しているのでしょうか。一般的な議論をざっとまとめると、

(1)原材料が化石資源ではなく植物(バイオマス)由来である場合
(2)生分解性を持つ場合
(3)製造プロセスの一部が発酵法などのバイオプロセスである場合
 

のどれかを満たしていれば、バイオプラスチックと呼んでいるようです。