日本人選手がNBAの舞台でダンクシュートを決める――誰が想像しただろうか。いや、むしろ想像をし続けたからこそ、それが現実のものなのか分からなくなったのかもしれない。
今年(2018年)7月にメンフィス・グリズリーズと契約した渡邉雄太は、いま日本で最も注目されているアスリートのひとりだ。何せ田臥勇太以来2人目の、14年ぶりの日本人NBAプレイヤーである。
ただし、当本人、渡邉雄太は満足していないだろう。
結果を残し、実力を証明し、本物の「契約」を勝ち取るまでは――。現地で取材を続けるスポーツジャーナリストの杉浦大介氏が、その可能性を考察する。(JBpress)
2ウェイ契約から本契約を勝ち取った例は?
晴れて日本人史上2人目のNBAになった渡邊雄太に関して、次の注目はNBAの本契約を獲得できるかどうかだろう。
現在の渡邊はメンフィス・グリズリーズとの2ウェイ契約。NBAでは昨季よりスタートした新システムで、基本的にはGリーグ(マイナーリーグ)の所属だが、1年に45日だけNBAでの出場が許される。今季序盤のグリズリーズには故障者が多かったこともあり、渡邊にも予想以上に早いNBAデヴューの機会が訪れた。同時にGリーグでも平均11.2得点、8.2リバウンド、1.8スティールと優れた成績を残し、いきなり評価を上げていることは間違いない。
「(2ウェイ契約の選手は)常に準備しておかなければいけません。難しいですけど、そういう経験ができるのもこのチームに(自身を含め)2人だけです。そこは苦に思うことはなく、ありがたい機会だというふうに感じてやっています」
常に前向きな渡邊はそう語り、じっくりと学んでいく姿勢を強調している。その多才さと成熟した姿勢はチーム内外でも好評で、NBAでもやっていける素材だと証明していると言って良い。だとすれば、本契約への期待が膨らむのは当然だろう。
2ウェイ契約はいつでもカット(解雇)されてしまうことがあるが、実力を認められればシーズン中にも本契約への変更は可能。昨季もCJ・ウィリアムズ(当時ロサンジェルス・クリッパーズ)、タイラー・キャバナー(当時アトランタ・ホークス)、マイク・ジェームズ(当時フェニックス・サンズ)、クイン・クック(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、アマイル・ジェファーソン(当時ミネソタ・ティンバーウルブズ)といった選手たちがシーズン中に2ウェイ契約から本契約に“昇格”してる。
なかでも故障者続出のウォリアーズで出番を掴み、プレーオフ前に2年契約を勝受け取り、優勝リングまで勝ち取ったクインの例が最も有名だ。また、ジョージ・ワシントン大時代には渡邊のチームメイトだったキャバナーも、序盤戦から力を示し、開幕から2ヶ月が過ぎた昨年12月18日には早くも2年契約を受け取った。好スタートを切った渡邊も、これらの先輩たちに続けるのか。