2018年9月21日、ウクライナ外務省は、ロシアに対し「友好協力パートナーシップ条約(以下、平和条約)」の未延長を通告した。
1997年に両国大統領が調印し、翌々年に批准された平和条約は10年ごとに更新されるが、20年間効力を維持した後、2019年4月末に失効することになる。
平和条約は「領土保全・国境線の不可侵」を謳っていたわけだから、ロシアがウクライナ領を侵略している現状では失効は当然であろう。
ちなみにロシア政府は「ロシアはウクライナの領土保全を尊重している(なぜならクリミア併合は合法的であるし、ドンバスにはロシア正規軍はいない)」という立場を崩していない。
一見すると、ロシアの「侵略」に対し、軍事的・経済的に劣るウクライナは為す術がないようである。
「『ウクライナの領土保全に関する』国連総会決議68/262号」にもかかわらず、ロシアはクリミア実効支配を強めており、本年5月15日には本土・半島間のケルチ海峡をつなぐクリミア橋を開通させている。
しかし、開通の数日前、ウクライナが、クリミアをめぐってハーグ国際司法裁判所でロシア政府に勝利を収めたことはあまり知られていない。
クリミアの戦い
クリミア架橋の経済効果は顕著なものがある。クリミア半島の今シーズンの観光客数は前年比3割増を記録、600万人を突破して過去の観光客数を更新している。
来年度に鉄道運航が開始されれば、ロシア本土からの旅客だけでなく物流も強化されることになる。
また、アゾフ海に面するウクライナの港湾都市、マリウポリやベルジャンスクに打撃を与えることもできる。橋の完工により、海面からの高さ33メートル、全長160メートル以上の船舶は通過が技術的に困難になっているからだ。