大学を巡る政策はこれまでどのような議論をたどってきたのか。

 前回の記事「迫り来る大学数減少時代、文科省の描く青写真は?」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53630)では、18歳人口の減少傾向と大学数の増加から必至と予見された大学の統廃合問題に対して、文部科学省の政策的対応は、2000年代前半に一度は着手されたものの、その後は大学改革全体を推し進める動きの中に埋没し、特段の手立てが取られないままに推移したことを指摘した。逆に言えば、いよいよ「2018年問題」*1が現実のものとなった現時点で、ようやく急ピッチでの対応策が模索されはじめたわけである。

*1:2018年を境として18歳人口が減少傾向に転じ、それが、各大学にとって、入学者の確保を困難にし、ひいては大学そのものの存続を危機に陥れかねないという「問題」。

「ずいぶん前から分かっていたことなのに」と感じなくもないのだが、ともかくも、この問題に対する文科省の施策の内容を具体的に検討することが、今回の記事の狙いである。

中教審・将来構想部会が発表した「中間まとめ」

 読者のみなさんもお気づきかもしれないが、大学の統廃合を円滑に進めるための枠組みに関して、文科省が続々と方針(例えば、国立大学の「アンブレラ方式(一つの国立大学法人のもとに複数の国立大学を設置)」、私立大学間における学部単位での事業譲渡)を明らかにし始め、メディアがそれを一斉に報じ始めたのは、去年から今年にかけての集中的な出来事である。

 それもそのはずだ。実は、当時の松野文部科学大臣は2017年3月、文科省の中央教育審議会(中教審)に対して「我が国の高等教育に関する将来構想について」諮問をしている。これを受けて、中教審の大学分科会は、直ちに「将来構想部会」を設置して、審議を開始した。そして、将来構想部会は、1年と少しの期間の審議を経て、今年(2018年)6月には早くも「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」を発表している。

 この間の文科省の政策方針の決定は、基本的にはこの中教審の将来構想部会の審議過程において練り上げられてきたものである。したがって、その全体像を理解するためには、この「中間まとめ」を精読してみることが、何より手っ取り早い。