本当に読むに値する「おすすめ本」を紹介する書評サイト「HONZ」から選りすぐりの記事をお届けします。

(文:内藤 順)

 続編は前作を超えない、そんな通説を吹き飛ばすような会心の一冊だ。人類の来し方を描き、全世界で800万部を超えるベストセラーとなった『サピエンス全史』。これを受けた本書『ホモ・デウス』では、人類の行く末を戦慄の姿として描き出す。

 過去何千年にもわたり人類を悩ましてきた問題、それは飢饉、疫病、そして戦争の3つであった。しかし驚くべきことに、我々は飢饉と疫病と戦争を首尾よく抑え込むことに成功し、この数十年で理解も制御もできる対処可能な課題へと変えることに成功したのである。

ホモ・サピエンスからホモ・デウスへ

 ならばそれらに代わり、新たに人類が取り組むべき課題とは何になるのだろうか? 著者のユヴァル・ノア・ハラリは、人類が不死と至福と神性を目指すようになるであろうと予測する。それは人間が自らを神へとアップグレードし、ホモ・サピエンスからホモ・デウスへ変わることを意味する。

 重要なのは、予測の根拠だ。本書の前半部では前作同様に、我々を我々たらしめているものとしての虚構に着目する。私達は虚構を信じる能力によって上手に協力することができるわけだが、一方で虚構には代償が伴う。会社、貨幣、国家・・・。虚構に過ぎなかったものが知らずのうちに強大化し、虚構によって私達の協力の目標が決まってしまうことも多々あるのだ。