地元選出の国会議員のマハティール首相が「地元にメリットはない」と前ナジブ政権が決定した同プロジェクトを批判しているだけではない。
「このプロジェクトは違法だ」(地元議員関係者)という反対の声が地元で挙がっており、プロジェクトの中止を求める動きがあるからだ。
というのも、ランカウイ島は2007年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が、環境保全を提唱するジオパークにアジアで初めて認定されている。
開発は島全体の35%までと限定され、透明度が高い青い海、豊かな熱帯雨林にマングローブや珊瑚礁など、手付かずの自然が保全されてきたアジアでも希少な島なのだ。
(ナジブ政権発足2年後の)2011年に、ユネスコが島の開発状況を調査した段階で、「島の自然が保全されず、開発が進んでいる」と懸念を示していた。
そんな状況下の中、この巨大リゾートプロジェクトは、サンゴ礁などが息づき、環境保全で開発規制がある海岸沿いが建設予定地になっている。
ここでは、環境アセスメント(EIA)の取得が義務づけられ、環境に大きな影響を与えると予想される開発事業に関しては、環境汚染を未然に防止するために地域住民などの意見を聞き、計画そのものに修正を加えることができるようになっている。
そこで、「EIAを取得していますか」と聞くと、「取得している」とスタッフは答えたが、正式な評価文書を見せてはくれなかった。
さらに、同行の地元関係者は「このプロジェクトは、地元経済に貢献するというが、ギャラリーにも地元の人間は採用されていない」と言う。
さらに、「建設業者なども地元ではなく中国の会社で、高級ホテルやマンションは、地元の我々が到底手に入らない価格」と怒りを露にした。