島で医師をしていたマハティール氏が、首相に就任した1980年代以降、ランカウイの観光誘致に力を入れてきた。
豊かな自然を保全する一方、間接税の廃止、ビーチでの勧誘や物売りも禁止するなど、環境を損ねないよう工夫と配慮を凝らして発展させてきた。
5月に政権交代させた総選挙では、地元、ランカウイ島から出馬し、勝利。世界最高齢(7月10日、93歳の誕生日を迎えた)の国会議員に就任するとともに、15年ぶりに、首相に返り咲いた。
今でも選挙区で故郷のような同島には、毎月のように帰っている。
6月末、地元での住民を招待したハリ・ラヤ(ムスリムの大祭)のオープンハウスの祭事で、「お国帰り」したマハティール氏に筆者は外国メディアで唯一、随行した。そして、久しぶりに目にしたランカウイの変貌に、驚かされた。
「中国一の億万長者」と名を馳せた大富豪、王健林(ワン・ジェンリン)氏率いる中国不動産大手、大連万達集団(ワンダ・グループ)などが手掛ける一大開発プロジェクト計画が、この小さな離島に立ち上がっているからだ。
ワンダ・グループ(以下、ワンダ)といえば、つい先日、1か月の死闘を終えフランスが優勝したワールドカップ(W杯)ロシア大会で、試合中やピッチ内で異彩を放っていた広告露出でご記憶の人も多いと思う。
同社は2015年、スペインのサッカークラブ「アトレティコ・マドリード」の大株主に名乗り出て、国際サッカー連盟(FIFA)のブラッター会長(当時)の親戚が経営する企業を買収するなど同会長一族と親交がある。
そうした経緯もあり、2030年までのFIFAの最上位スポンサー(公式パートナー)として契約を締結しているのだ。
今シーズンから、アトレティコ・マドリードの本拠地は、命名権の取得で「ワンダ・メトロポリターノ」と呼ばれるようにもなっている。