エコノミスト・カンファレンス「ジャパン・サミット2010――日本における世代シフト、新たな時代のリーダーと変革のビジョン」のダイジェスト第6回は「戦後体制の終焉:新時代の政治とは?」。
新党改革代表・元厚生労働大臣の舛添要一氏、自由民主党総務会長の小池百合子氏、新潟県立大学学長の猪口孝氏、マサチューセッツ工科大学政治(日本)エキスパートのトバイアス・ハリス氏によるパネルディスカッションで政治的課題を論じた。司会はエコノミスト誌東京支局長のヘンリー・トリックス氏。
進むべき方向をはっきり示すことができない日本
トリックス 国際社会の中で日本がどのような状況にあるのか、また、日本の問題点について指摘してください。
ハリス 最大の問題は、これから進むべき方向性をはっきり示すことができないということです。
民主党だけの問題ではありませんが、コミュニケーションがうまく取れず、どういう方向に行こうとしているのかはっきりしない。そして、世論の動きに右往左往して一度決めたことを見直したりするのがとても見苦しい。
民主党はさまざまな制度の変更をしようとしていますが、それは本来であれば何年も前に手をつけるべき課題でした。自民党が下野したことで初めて着手することができたということでしょう。
民主党は「変革」を訴えて政権を取りましたが、実際に制度を変えようとすれば、反発・反論が出てきます。
押したり引いたりの繰り返しで妥協を重ね、新しいシステムが上手く動きだすには時間がかかる。緊急性のある問題もたくさんありますが、20年来の課題もあり、そう簡単に問題解決はできないのではないかと思っています。
エキセントリック、イノベーティブな若者を伸ばせ
トリックス 日本に未来はあるのでしょうか。
猪口 日本、韓国、台湾など東アジアの民主国家は非常に力があり、将来は有望だと思います。
また、最近の学生は勉強しないとか外国に興味がないとよく言われますが、大学にいると、私が学生だった頃に比べて、よく勉強している人、頭がいい人が非常に多いことを実感します。英語も上手な人は私たちの時代の10倍ぐらいよくできるし見識も広い。
日本の社会の問題は、エキセントリックとか、エナジェティックとか、インテリジェントとか、イノベーティブとか、人とは違う、秀でている人を嫌うことです。自分の優越感が汚されるのを恐れて仲間から追い出そうとします。
私も前期高齢者となりました。同世代の仲間の中には、自分が活躍した時代のやり方がダメになった、もう古いと言われると自尊心を傷つけられて怒りだす人がいますが、それは間違いです。
過去の栄光を担った皆さま方に言いたいのは、将来は過去とは違う別のやり方で進んでいくのだということを認めて、エキセントリックだけどエナジェティック、インテリジェントでイノベーティブ、こういう若者を伸ばすために手を貸すことが必要だということです。それが日本の輝かしい未来をつくる基本条件になると思います。