ロシアの代表的なお墓。グラニト・ヴォストーク・アート社提供

 筆者はロシアに住んで5年足らずのアラサーだが、この間に身近な人が4人も亡くなり、相次いで葬儀に出席した。しかも、この原稿を書いている最中にも不幸があった。

 ロシアは今、休暇シーズンの真っ只中。知人が旅行先で飲みすぎ、30歳の若さで急性アルコール中毒で亡くなってしまったのだ。

 訃報があまりに続くので、自分の行く先も心配になり、万一に備えて死後のことを考え始めた。

死に関することを嫌うロシア人

 基本的に、こういう姿勢はロシア人には理解されない。ロシア人はだいたい迷信深いが、死に関することとなると輪をかけて迷信深い。

 生きているうちに死後のことを考えるのは縁起が悪く、そういう話題は嫌がられるのだ。

 筆者の友人は出張中に飛行機事故で亡くなったため、フライトの前にはいつも不安がよぎるが、事故に遭った場合に備えて上司に連絡先を渡しておこうとすると「縁起でもない」と怒られた。

 まして終活やエンディングノートなど、ロシア人の想像の範疇を超えている。

 日本では樹木葬や散骨、ダイヤモンド葬など、従来の墓という形式にとらわれないスタイルも珍しくなくなっているが、ロシア人はやはり伝統的な墓がある方が落ち着くようだ。

 最もよく見かける墓は土葬で、テリトリーには「囲い」がしてあり、墓石には名前が刻まれ、ときどき顔写真がついているというものだ。

 とは言え、そこは死後の準備を考えたくないロシア人。