米朝首脳会談開催をめぐり、駆け引きが続いている。
いずれ会談は行われるであろうが、会談で米朝が、北朝鮮の「CVID(完全かつ検証可能で不可逆の非核化)」に合意したとしても、実質的な真のCVIDの実現はできるのであろうか。その可能性を分析する。
1 CVIDが実現できない軍事上の理由
米朝首脳会談開催については、開催合意後も駆け引きが続いている。米朝は、まだ実質的な譲歩をしているわけではない。特に米国はCVIDを北朝鮮が行動で示すまでは、圧力を緩めないとする原則的な立場を崩していない。
しかし、CVIDを真に達成することは、以下の軍事的理由からほぼ不可能と言える。
まず、空爆による核関連施設などの全数破壊はできない。
地下目標の位置把握と破壊の困難さ。北朝鮮には地下施設が1万数千か所あり、弾道ミサイルの数は1000発程度とみられ、その大半は移動式の発射台から、最大200か所の基地から発射可能で、普段は地下に格納されている。
地下施設のうちのどれに核関連施設や核ミサイル基地があるのか、完全に把握するのは困難である。
また、地下施設の位置が判明したとしても、それらを確実に破壊するのも容易ではない。通常弾頭では地下70メートル、核弾頭を使っても地下数百メートルまでしか破壊できない。地下施設を確実に破壊するのは、空爆のみでは不可能である。
しらみつぶしに地下施設を制圧するには、1993年当時の見積を準拠とすれば、湾岸戦争に匹敵する数十万人の地上兵力により北進し、本格的な第2次朝鮮戦争を数か月にわたり行わねばならないと予想される。
しかし、その結果、通常戦力による戦いだけでも、米軍に数十万人、南北朝鮮では民間人を含め数百万人の損害が出るであろう。