このビジネスモデルは、ホテルだけが儲けるのではなく、町全体が儲かることに気づく。宿泊客が増えれば、町の定食屋が儲かり、飲み屋さんが儲かり、レンタサイクル屋が儲かり、お土産屋が儲かる。以前の半数(5軒)になってしまった銭湯を盛り上げることにもつながる。

 さらに、このhanareの宿泊棟は、長年空き家だった建物を借り受けてリノベーションしたもので、空き家対策にもなっている。しかも、空き家のリノベーションや分散型ホテル運営に、行政からの補助金は全く入っておらず、完全な民間事業であることも注目だ。

空き家をリノベーションした宿泊棟(レセプションから徒歩1分)

イタリアの「アルベルゴディフーゾ」がモデル

 空き家を活用して町全体をホテルに見立てる同様の取り組みは、空き家“先進国”のイタリアでも行われている。「アルベルゴディフーゾ(Albergo Diffuso:分散型ホテル)」と呼ばれ、アルベルゴディフーゾ協会に登録しているものだけで94、登録していないものも含めると150程度ではないかとされている(参考資料1)。

 アルベルゴディフーゾでは、単に空き家の鍵を渡して部屋に案内すれば終わりではなく、宿泊者に街を体験してもらう、町全体で旅行者をもてなすことに重点が置いているという。

*アルベルゴディフーゾについて興味がある方はこちら(参考資料)
参考1:『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』(馬場正尊ら編著:学芸出版社)
参考2:http://coinaca.com/(菊地マリエ氏運営)

アルベルゴディフーゾのイメージ(アルベルゴディフーゾ協会HPより)