マティス米国防長官「中ロの脅威増大」に警鐘 「優位喪失」指摘

ジェームズ・マティス米国防長官(2017年11月28日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / JIM WATSON〔AFPBB News

米国にとっての「4+1」の脅威と「2つの大きな脅威」

 米国は、「4+1」といわれる脅威に悩まされている。中国、ロシア、北朝鮮、イランの4か国に加え、国際テロの脅威である。

 これらの脅威は、昨年12月に公表された米国の「国家安全保障戦略」(NSS2017)と今年1月に公表された「国防戦略」(NDS2018)において、名指しで指摘されたもので、すでに衆知のところであろう。

 なかでも、中国とロシアは、力による「現状変更勢力」であり、米国に挑戦し、安全や繁栄を脅かそうとしている「ライバル強国」と位置づけた。そして米国は、両国との「新たな競争(抗争)の時代」に入ったとし、このゲームに勝利すると宣言した。

 米国は、NSS2017とNDS2018に基づき、今年末までに制服組のトップである統合参謀本部議長の下で「国家軍事戦略」(NMS)を作成する予定である。

 そのNMSでは、中国とロシアを主対象に、「グローバル作戦計画」(global campaign plan)として策定することが検討されているようであるが、この「2つの大きな脅威」にいかに対応するか、あるいは対応する余裕があるのか、と今米軍首脳の間では真剣な議論が展開されている。

米国の力を分散させる中露の「2つの大きな脅威」

 この件は、すでに、筆者が執筆に加わった共著『中国の海洋侵出を抑え込む 日本の対中防衛戦略』(国書刊行会、2017年9月発行)の中で指摘した問題である。

 現在、中国とロシアは、戦略的連携・協調関係にある。

 欧州(NATO=北大西洋条約機構)正面において、ウクライナ問題などを抱えるロシアは極東の安定を欲し、同時に、海洋侵出を図る中国は大陸正面の地域安全を確保する必要があることから、両国が戦略的協調・連携に走るのは当然の成り行きと言えよう。

 もし、現在の中露関係が維持され、中国が東シナ海・南シナ海での海洋侵出を、またロシアが周辺での勢力圏構築を、それぞれ執拗に追い求める場合、米国はユーラシア大陸の東西において、両国からの脅威に対する対応を余儀なくされ、その結果、米国が力の分散を強いられるのは避けられない難題である。