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英原発計画、電力料金上乗せ予想超 35年間で計4兆円か

英イングランド南西部ヒンクリーポイントに建設が予定されている原子炉2基の完成イメージ。EDFエナジー提供(2016年7月28日提供)。(c)AFP/EDF ENERGY〔AFPBB News

(文:杜 耕次)

 東芝を破綻の崖っぷちまで追い込んだ原子力事業子会社(当時)「ウエスチングハウス(WH)」の、米連邦破産法11条(チャプターイレブン)申請からまだ1年足らず。安倍晋三首相率いる日本政府は、原子力産業の幻影をいまだに追い続けている。

 年明けから相も変わらぬ「バラ色の原発」を想定する政策が目白押しで、資金難に悩む英原子力発電所新設事業に日本の官民で1兆円超の投融資を実施する支援プランについて、朝日新聞が1面トップで報じたのは1月11日のことだった。また同20日には、原発向け濃縮ウランを製造する欧州企業を、国際協力銀行(JBIC)が米社と共同で買収する交渉を進めていることを日本経済新聞がスッパ抜いた。世界的な退潮に拍車が掛かる原発ビジネスを一手に支えようとする安倍政権。欧米官民が忌避する原子力ビジネスのリスクを背負わされるのは、結局日本国民になりそうだ。

政府全額保証という異例な手厚さ

 1兆円超の官民融資が検討されているのは、日立製作所傘下の英ホライズンニュークリアパワー社(グロスターシャー州、以下ホライズン社)が、英中部ウェールズ地方のアングルシー島で進めるウィルファ・ニューウィッド原子力発電所の新設プロジェクト。日立製の出力130万キロワット級改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を2基設置する計画で、2019年の着工、2020年代半ばの運転開始を目指している。

 同プロジェクトの総事業費は200億ポンド(約3兆900億円)。現在検討中の資金プランでは、まずホライズン社の出資金が4500億円、続いて日英双方からの事業融資が2兆2000億円、その他が3000億円とされている。

 このうち出資金の3分の1にあたる1500億円を、日本政策投資銀行(DBJ)のほか東京電力ホールディングスなど日本の電力大手が負担し、融資額の半分である1兆1000億円を、JBICやメガバンク3行など日本勢が供与する方向で交渉が進んでいる。

 メガバンク3行の融資(1行あたり1500億円となる見通し)については、日本貿易保険(NEXI)を通じて政府が全額保証する手厚さだ。「先進国向け案件でNEXIの全額保証が付くのは異例」(政府関係者)であり、政府がそれほど至れり尽くせりなのは、「それだけの手立てを講じてもらわなければリスクが高すぎて応じられない」(メガバンク関係者)ということの裏返しでもある。

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