中国の経済成長とともに、国際的な競争力と影響力を持つ中国企業が年々増加しています。けれども、そうした中国企業や経営者が日本で紹介される機会はあまり多くありません。唯一の例外と言えるのが、ECで世界最大手のアリババグループと、その創業者であるジャック・マーぐらいでしょう。しかしそれ以外となると、中国にはどんな会社があって、その創業者はどのような人物なのか、業界関係者以外にはほとんど認知されていないと言っても過言ではありません。
そこで今回は、筆者が「日本人ならばその名を知っておくべき」と思う中国企業として、中国の建機製造メーカー・ビッグ3の一角である「三一重工股份有限公司」(以下「三一重工」)と、その創業者であり現代表である梁穏根(りょうおんこん)の来歴について紹介したいと思います。
羊の買い付けビジネスからスタート
梁穏根は1956年、中国南部の内陸部に位置する湖南省の山村に生まれました。元々の名前は「梁永根」でしたが、事業家として活動を始めた1988年に、事業の穏やかな発展と自身の人格が穏やかとなることを願い、現在の「梁穏根」へと改名しています。
1983年、現在の中南大学を卒業するとエンジニアとして兵器工廠に勤務し、1986年まで4年間勤めました。当時の中国は社会主義の空気がまだ色濃かったのですが、鄧小平が改革開放政策を進め、市場が徐々に開放され始めた時代でもありました。この流れに乗ろうとした梁穏根は3人の仲間とともに兵器工廠を辞め、羊の買い付けビジネスを立ち上げます。