蒼井そら個人の責任とは言えないが、中国で彼女がアイコンになったAV女優ブームは、結果的に日中間のアンダーグラウンドな商業活動を活発化させた。「日本=ポルノ」という中国国内のイメージを強化させてしまった点も含めて、その功罪はやはり指摘されるべきだろう。
そもそも、2010年代の中国社会で最も高い人気を集めた日本人がAV女優だったのは、一抹のさみしさを感じさせる話でもある。過去に中国で同様のポジションに位置づけられた日本人は、1980年代は人気映画を通じた高倉健と山口百恵、1990年代はテレビドラマを通じた酒井法子や木村拓哉、2000年代はJ-POPを通じた浜崎あゆみや宇多田ヒカルと、錚々たるビッグネーム揃いだったのだ。
近年の中国で蒼井そらだけが突出した注目を集めたのは、かつての映画・ドラマ・音楽といった日本のポップカルチャーが往年の力を失い、ソフトパワーとして国際的な訴求力を持つコンテンツが(アニメを除けば)ほぼ女性のハダカだけになってしまった現実を反映しているとも言えるのである。
今回の結婚発表によって、今後の中国での蒼井そら人気は下火になっていくことが予想される。次の時代に、中国で人気を博す日本人は果たしてどういうジャンルの人だろうか。そもそも、特定の日本の芸能人への人気が中国国内で社会現象化するような事態が、今後に再度起きることはあり得るのだろうか。
7年間にわたる蒼井そら現象を振り返って、ついそんなことも考えてしまう。
(文中敬称略)