もっとも、中国社会の変化は想像以上に速い。習近平政権の成立(2013年)前後からメディアの娯楽表現に対する規制が徐々に強まり、2015年ごろからはAV女優のテレビ出演は減りはじめた。蒼井そらの人気も、この頃から若干の陰りを見せ始め、香港メディアなどでは中国国内での活動停止の噂もささやかれていた。

 中国市場での人気がピークを過ぎつつあったことを考えると、蒼井そらの今回の結婚発表は、タイミング的にはベストだったのかもしれない。

蒼井そら現象の功罪とその評価

 中国国内で日本の存在感が薄れ、領土問題などで政治的な摩擦も強まった2010年代に、蒼井そらの人気は中国の庶民の対日感情をマイルドにさせる役割を果たした。日中両国の交流の関係の安定化に一定の貢献を残したことは間違いない。

 ただ、蒼井そら現象を日中友好の美しい文脈だけで語ることには問題もある。いくらクリーンなイメージを前面に押し出しても、AV女優の仕事とは性行為を売りにしたポルノ映像への出演であり、業界の少なくとも一部がグレーな世界との親和性を持っていることは周知の話だからだ。

 事実、蒼井そら現象の加熱後は中国の経済発展や円安も相まって、日本のAV女優が中国人の富豪に一定期間レンタルされるために訪中したり、逆に中国の富裕層が日本国内でAV女優と遊ぼうとする例が一気に増えた。