穀物埠頭で荷役する貨物船。日本の食料の大半が輸入によるものだ。

 日本の食料安全保障をめぐる状況にはどういったリスクがあり、どのような対策がありうるのか。12月6日に「『グローバル食料争奪時代』を見据えた日本の食料安全保障戦略の構築に向けて」という報告書を公表したマッキンゼー・アンド・カンパニーの山田唯人氏に話を聞いている。

 前篇では、世界全体では今後の食料需給は深刻に逼迫するおそれは少ないながらも、グローバルな「食料争奪」時代が訪れ、日本が中国など各国に食料を奪われるリスクを持っているという話があった。

 では、日本はどのような「針路」をとるべきなのか。引き続き山田氏に聞いた。

リスクの進展段階ごとに打てる手がある

マッキンゼー・アンド・カンパニーが2017年12月6日(水)に公表した報告書「『グローバル食料争奪時代』を見据えた日本の食料安全保障戦略の構築に向けて」。

 世界各国で食習慣の変化や政策の転換などが起きている。これにより食料輸出入のバランスが変わりゆく。そうした変動から「食料争奪」というべき状況が将来グローバルに起きうる。食料自給率が熱量ベースでは4割に満たない日本は、まさにこのリスクに晒されている。

 山田氏は、リスクを減らすための施策を多段的に用意しておくことの重要性を強調する。

「まず、リスクを未然に防止するため、一国に対する輸入依存度を低くしておくことです」。リスクの回避は、リスクの分散から。複数の国からの輸入量を増加・増加させておくことが備えの1つとなるわけだ。

「次に、実際に輸入停止などの事態が起きてしまったときのことを考えて、備蓄を確保しておくことや消費量を減らすことにより、影響を緩和しなければなりません」。備蓄の点では、他の輸入国と共同で備蓄を推進することなども考えられるという。また、消費量を減らすというのは、代替できる材料を使うなどの手段だ。

「そして、影響が起きたときの短縮化も重要です」。輸入元の切り替えに要する時間を短縮することができれば、影響を短期間で鎮めることにつながる。

 食料・食材ごとに、どのようなリスクがどの程度あるのか、また、どの方策がとりわけ有効になるかを考えておくことが重要と、山田氏は指摘する。