「眠れてないときほど腹が減る」の根拠はどこに?

睡眠不足と食欲の関係を探る(前篇)

2017.11.10(Fri)漆原 次郎

7時間睡眠と3.5時間睡眠、体の変化の違いを調べる

――実験でも疫学研究でも、睡眠時間が短いと食欲が増進したり肥満リスクが増加したりすることが示唆されているわけですね。そもそも、どうしてこのような体の仕組みになっているのかについては考察されているのでしょうか?

有竹 すべての研究者が言っているわけではありませんが、覚醒している時間が長くなる分、エネルギー消費が多くなり、それにより摂食行動も多くなるからという考え方があります。たしかに、寝ている間は摂食しないので、リーズナブルな話には感じられます。

 けれども、睡眠時間が短いからエネルギー消費が増えて、その分、摂食行動が多くなるのかについては、きちんと解明されてはきませんでした。先行研究はあるものの、一通りの知見が出されているわけではありません。

 この点について解明しようと、今回、早稲田大学(当時)の内田直教授や、花王の日比壮信主任研究員たちが中心となり、私も参加して研究を行い、2017年1月に論文を発表したのです。(Hibi, M. et al. (2017) Effect of shortened sleep on energy expenditure, core body temperature, and appetite: a human randomised crossover trial. Sci. Rep. 7, 39640

――どのような実験を行ったのですか?

有竹 9人の若い健康な男性を被験者としました。まず、3日間にわたり7.5時間の睡眠をとった場合と、3日間にわたり3.5時間の睡眠をとった場合に分けます。そして、3日目の19:00から代謝測定を開始して、3日目の睡眠とその翌日の回復睡眠を含む計48時間を測定対象として、7時間睡眠者と3.5時間睡眠者における、エネルギー消費、深部体温、そして食欲などの違いを調べました。

――先行研究が数ある中で、この研究のオリジナリティはどのようなものですか?

有竹 実験系の緻密さが挙げられます。この類の一般的な実験では、被験者のエネルギー消費量を測るとき、ホースにつないだマスクを装着してもらいます。一方、今回の実験では、花王が所有する「ヒューマンカロリメーター」と呼ばれる個室型の代謝測定装置が使われました。被験者が個室の中で過ごすだけで、呼吸により空気の成分が変化するので、それを測定し代謝量を測ることができるのです。マスクを装着する必要もありません。日本では数カ所の研究機関しか所有していません。

 なおかつ、今回の実験では被験者の血液が採取されて、グルコースやインシュリンをはじめとする体内物質の量の変化が分析されました。さらに、1時間ごとに被験者に空腹感や満腹感などを聞く主観的調査も行われました。

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