アメリカ海軍駆逐艦チェイフィーは、10月10日、西沙諸島(パラセル諸島)で「公海航行自由原則維持のための作戦」(FONOP)を実施した。
西沙諸島は中国とベトナム(そして台湾も)が領有権を主張しているが、1974年に中国がベトナムとの戦闘に打ち勝って占領して以来、中国が実効支配を続けている。西沙諸島の中心となっている永興島には中国による南シナ海支配の行政機関である三沙市政庁が設置され、3000メートル級滑走路や駆逐艦や大型巡視船なども拠点とできる港湾施設、それに漁業施設や商業施設などの民間人居住区も存在する。
トランプ政権下で4回目となる今回のFONOPでは、チェイフィーは西沙諸島のいずれの島嶼の12海里内海域にも接近しなかった。その代わり、中国が西沙諸島の領海線として設置している線引き方法を「不適切である」とアメリカが指摘している海域を、米海軍駆逐艦が通航した。トランプ大統領の訪問を控えた中国に対して遠慮した形のFONOPであった。
もっとも、アメリカのFONOP実施に対しては、中国海軍が脅威を受けていようがいまいが対抗行動を実施し、中国政府が非難声明を発するのがパターン化されている。
今回も、中国海軍フリゲートと2機の戦闘機、それにヘリコプターがチェイフィーに接近して警告を発した。そして、中国当局は米軍艦の西沙諸島への威嚇的接近を非難するとともに、中国海軍が「米駆逐艦を追い払った」との声明を公表した。