確かに、今年、不動産価格の高騰を抑えるために導入された一連の政策は、まったく効果を見せず、それどころか11月には全国70都市の大・中型都市で前年同期比7.7%も上昇した。市民は、「政策」が名ばかりであることを見抜いているのだ。

 「中国就是『来得快、去得快』」(中国は『来るのも早いが、去ってしまうのも早い』)という皮肉も聞かれた。対策を打つのは確かに早い。だが、しばらくするとすぐに原状に戻ってしまう現実を指摘したのだった。

 「どうせまたすぐに価格は上がるだろう」と諦めに近い声もあれば、「そもそも政策と実際は異なる」と見切りをつける声もある。

政府が一番恐れるのはバブル崩壊?

 中にはこんな見方もあった。「マスコミが過剰に物価の上昇を報じるのは、中国政府の意図が介在しているのではないか。インフレならば、資金は不動産に回る。つまり、バブル崩壊を回避できることになる」

 4兆元の財政出動の結果、資金は不動産投資に回り、2009年に中国の各都市で不動産は異常な値上がりを見せた。それに対して政府は一連の不動産抑制策を打ち、不動産取引を停滞させ、結果的に経済成長を鈍化させてしまった。

 そこで、マスコミにインフレを騒ぎ立てさせ、市民の目を「価値が目減りする人民元」から「不動産の購入」に転じさせた――、そんな解釈である。

 より悲観的な見方をすれば、金融危機を救うために行った政策がすべて裏目に出てしまい、そのツケが市民に回されたということだ。インフレ問題と不動産問題という2つの難題の解決を、「市民」に負わせようという荒技である。本当にそうだとしたらあまりにも悲劇だ。

 上海万博で沸いた2010年とは打って変わって、2011年、上海は冬の時代を迎えると予測される。地元紙「東方早報」によれば、上海、北京など7都市の半数上の家庭で、「今後1年は消費を抑える」傾向にあるという。

 ましてや、前述したように中国全体では7割以上の家庭が低所得者層に属する。その個人消費から見通す2011年は真っ暗な闇の中にあると言わざるを得ない。