株式市場ではインフレ抑制が入るという危惧感から、上海A株が暴落した。投機マネーが流入して11月上旬に価格が急上昇したニンニク(前月比95.8%増)、ショウガ(前月比89.5%増、いずれも全国36の大・中型都市)も、11月15日には3割下落した。

 続いて11月21日、国務院は「物価を安定させインフレを抑えるための政策(国務院16条)」を発表した。文字通り16カ条から成り立つこの抑制策には、様々な角度からの対策が盛り込まれた。

 農業については、生産体制の強化と安定供給が掲げられた。資源については、化学肥料工場への供電確保。また、市場秩序維持に対しては、買い付けから市場販売の過程における価格の監督強化が掲げられた。さらに先物市場に対しては、悪意の買い占めや価格つり上げ防止。そして、低所得者層に対しては、その補助が掲げられた。

 上海市でも、11月24日に上海市農業委員会が「上海の物価安定のための8項目の措置」を発表。11月30日には上海市政府が「物価安定のための12条」を発表した。

 上海市においては、物流の中間過程を排除し、食品スーパーと農村との直取引や、市が直接農産物を買い付け提供する「直売方式」が重点策とされた。また、末端消費者に最も近い場所で販売する形態が推奨され、社区(マンションやアパートを単位としたコミュニティ)での直売も導入されるという。

 矢継ぎ早に打ち出される新政策は、日々、地元紙の1面で報じられた。11月23日には「一部の葉物野菜が4割下落した」との報道があり、また30日には「野菜の価格はたった10日間で難局を脱した」とも報道された。

「政策」に対する市民の反応は冷ややか

 そうした中国政府の対応の早さを、さぞ市民は評価しているかと思いきや、市民の反応はまったく予想に反していた。

 筆者がヒアリングした中で圧倒的多数を占めたのは、「農産物の価格だけ抑え込んでも仕方がない」という意見である。農産物価格は一時に比べ下落したものの、牛乳や卵など他の食品が値上がりしており、依然その生活は厳しい状態に置かれている。

 中国のメディアは毎日のように、物価安定のための政府の取り組みを報道している。しかし、「そんなニュースは聞き飽きた」と跳ね返す市民も少なくない。