北朝鮮は9月3日、日米韓など国際社会の警告を無視して、6回目の核実験を強行した。7月には2度にわたる大陸間弾道ミサイル「火星14」の試験発射を実施した。
8月5日にはこれまでにない強い国連制裁決議がなされた。だが、これを無視するかのように8月29日、中距離弾道ミサイル「火星12」を発射し、日本上空を通過させた後、太平洋に着弾させた。そして今回の核実験である。
北朝鮮の核兵器研究所は、大陸間弾道ミサイル用水爆の実験が北部の実験場で行われ、「完全に成功した」と発表した。また核弾頭について、電子機器を麻痺させる電磁パルス(EMP)攻撃も可能な多機能弾頭と伝えている。
核実験は1年ぶりであり、米国のドナルド・トランプ政権発足後初めてである。トランプ大統領の「炎と怒り」発言や「誰も見たことのない事態が北朝鮮で起きるであろう」といった異例の強硬姿勢にもかかわらず、核実験を強行した背景には、今こそ核搭載ICBM開発に拍車をかける絶好のチャンスと見たのではないだろうか。
米国は軍事活動に出ないとみる金正恩
米国の強硬姿勢はコケ脅しだ。今は何をやっても米国は軍事力行使をしないとの深い読みが金正恩朝鮮労働党委員長にはあり、危険な賭けに出たのだろう。またインドとパキスタンが計6回の地下核実験を実施した後、事実上の核保有国として認められていることも念頭にあったのかもしれない。
韓国に亡命した太永浩元北朝鮮駐英公使は「米韓の政権交代期を核開発の好機とみて、2017年末までに核開発を完成させる目標を立てている」と述べている。
ジェームズ・マティス米国防長官は3日、ホワイトハウスでの安全保障チームによる緊急会合の後、制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長と共に報道陣の前に現れ、「米国やグアムを含む米領、そして同盟国に対するいかなる脅威も、大規模な軍事的対応、効果的かつ圧倒的な対応に直面するだろう」と述べ「われわれには数多くの軍事的選択肢がある」と強く警告した。
安倍晋三政権は「対話と圧力」を主張し、国際社会に強く経済制裁を働きかけてきたものの、北朝鮮は「カエルの面になんとか」状態である。
つい先日、「火星12」が津軽海峡上空を横断した直後の核実験でもあり、日本国内ではこれまでにない危機感が高まっている。だが、同時に日本一国ではどうしようもないという無力感に苛まれている感がある。
国内メディアはこういった雰囲気に乗じてか、米国の軍事力行使を盛んに取り上げている。米国でも50%以上の国民が北朝鮮に軍事力行使すべしという世論調査結果が出ている。
日本国民も声高には主張しないものの、米国の軍事力行使に対して潜在的期待感が見え隠れし、米軍は必ず軍事力行使をやるだろう、やるはずだ、いや、やるに違いないといった根拠のない希望的観測が横行しているようだ。
米国は北朝鮮に軍事力行使をするだろうか。するにせよ、しないにせよ、日本は韓国に次いでその影響を受ける国である。我々は希望的観測を排除し、冷静に情勢を分析し、日本の採るべき次の一手を考えなければならない。