8月20日以降、東芝メモリの売却をめぐる状況が、二転三転した。まったくライター泣かせな話である。書きかけた原稿を廃棄し、また書き直す。これを何度も繰り返した。

 その挙句、東芝の取締役会が目指した「8月末に売却先決定」は実現しなかった。一体、売却先は、どこに、いつ決まるのか? そもそも、売却できるのか? 

 本稿では、まず、二転三転した経緯を簡単に復習する。次に、現在、各社のNANDフラッシュメモリの売上高がどうなっているかを示す。そこから、2016年以降、各社がNANDの売上を伸ばしており、意外にも米ウエスタンデジタル(WD)の成長率がサムスン電子を上回っていることを明らかにする。

 さらに、WDが東芝に歩み寄ってきた原因を論じたい。WDとしては、オールフラッシュサーバー市場の拡大とともにSSD(ソリッドステートドライブ)需要が増大している好機に、東芝メモリのNANDを何としても競合他社に取られたくないというのが本音である。そして最後に、WDと東芝の両トップへ直訴したいことを述べる。

内部崩壊した「第1次日米韓連合」

 東芝の取締役会は6月21日、産業革新機構を中心とする「第1次日米韓連合」に、東芝メモリ買収の優先交渉権を与えた。「第1次日米韓連合」は、特別目的会社(SPC:Special Purpose Company)を設立し、このSPCが東芝メモリを2兆円で買収する計画だった(図1)。

図1 SKハイニックス(SK Hynix)の謀反により内部崩壊した「第1次日米韓連合」