東芝の取締役会は9月20日、米ファンドのベインキャピタルを中心とする「新日米韓連合」に、東芝メモリを売却することを取締役会で決議した。直前まで、米ウエスタンデジタル(WD)の陣営と、ベインの陣営と、「どっちに売るんだ?」と揉めに揉めていたが、とうとう、ベインの陣営に決めた。
「新日米韓連合」には、ベインを中心として、米アップル、米デル、米シーゲート・テクノロジー、米キングストンテクノロジー、韓国SKハイニックス(SK Hynix)、日本のHOYA、産業革新機構、日本政策投資銀行が加わっている(図1)。これらが、「パンゲア」と名付けられた特別目的会社に出資や融資を行い、東芝本体も3505億円を拠出して、東芝メモリを2.4兆円で買収する計画である。
革新機構や政策銀は、東芝とWDが訴訟を行っている間は出資できないらしいが、それを当面、ベインが肩代わりする。また、ベインは、翌年度の投資資金3000億円程度も用意するという。このような好条件が、東芝の取締役会の賛同を得ることになったのだろう。
なお、特別目的会社の名前の「パンゲア」とは、約2億年前、大陸移動が起こる前に、現在の大陸が巨大な1つの塊であったと想定される大陸の名称とのことである。パンゲア大陸はその後、ユーラシア、インド、北米、南米、アフリカなどに“分裂”していったとされる。何と不吉な名前を付けたのだろう。誰が命名したか知らないが、そのセンスの悪さを疑う。
また、東芝の取締役会は一度決めたことを、その後すぐに引っくり返すということを今まで散々繰り返してきている。したがって筆者は、ベインの陣営と「正式に売却契約を締結した」というニュースが出るまで、「本当にここに売却できるのか?」と不信感を持っている。今度こそ、本当に契約してほしいものである。
と思っていたら、この原稿を書いた後の9月28日、東芝は、「新日米韓連合」と売却契約を締結したと発表した。やっと本当に契約締結に至ったらしい(日経新聞9月29日)。