見守り続けた男
今回の新投資法の制定に先立ち、ミャンマー政府は5年前の2012年にも投資法の見直しを行っている。
この時は、約50年にわたる閉鎖的な軍事政権下で遅れを取ったこの国の経済発展を促すべく24年ぶりに外国投資法を改正し、外国投資企業に税務上の恩恵を与えたり、土地の長期リース期間を強化したり、投資認可に関する手続きを明確化したりした。
その一方で、ミャンマーの国内企業に対しては、国内投資法が適用されていた。
その点、新投資法は、これら2本の法律を統合し、外国投資か内資かを問わず、ミャンマー国内のすべての投資活動に対して一元的に適用されることがポイントだ。
法案の起草作業が始まったのは、テインセイン氏率いる前政権時代の2014年4月のこと。
その後、2015年11月に実施された総選挙で野党・国民民主連盟(NLD)が圧勝し、政権交代が行われたため審議の長期化も懸念されたが、結果的には、アウンサンスーチー国家顧問兼外相がバラク・オバマ前・米大統領と会談した1カ月後に成立した。
「法整備については、根幹的な課題として、前政権から引き続き新政権下でも重視されている。ミャンマー経済の飛躍を制限してきた制裁の解除は、そうした取り組みの延長上に位置付けられる」と本間さんは見ている。
考えてみると、この新投資法の審議プロセスを本間さんほど近くで見守り続けた日本人はいないだろう。
2014年3月にDICAに着任直後に新投資法の審議が開始され、成立を見届ける形で離任したのは不思議な巡り合わせとしか言いようがないし、関係省庁が集まって投資の許認可を審議する「実務レベル審査会合」にも都合がつく限り出席し続けたため、どんなポイントが議論になりやすいか「肌感覚で」理解できるようになったという。
「特に論点となるのは、土地の登記や環境社会配慮の事項ですね」「最近は、その投資によって地元にどれだけ雇用が生まれるかや、近隣の住民にも技術訓練が提供されるかといった企業の社会的責任(CSR)の観点も重視されつつあるようです」
そう解説する本間さんは、着任2日目から身に着けているロンジー姿も手伝って、まさにミャンマー投資の伝道師そのものだ。