「増税」は世界中のリーダーが最も慎重に取り組む課題だ。韓国の新政権は、「支持率が高い今が絶好のタイミングだ」とばかり、大企業と富裕層に対する増税を打ち出した。産業界もびっくりの電撃的な決断だった。
まさに驚きのスピード決定だった。
突然の、増税発言
2017年7月20日午前、金東兗(キム・ドンヨン=1957年生)経済副首相が主宰した「経済関係長官(閣僚)会議」が開かれた。
文在寅政権は、今後5年間の政権の主要政策をまとめた「国家運営5カ年計画」として「100大国政課題」を発表したばかりだった。これを受けて、経済分野での政策を議論する場だった。
この席で、与党・共に民主党の4回当選の重鎮国会議員である金富謙(キム・ブギョン=1956年生)行政自治相が、突然、こう切り出したのだ。
「新政府の100大国政課題を達成するためには、増税が不可避だ。より良い福祉を提供するためには、うまくいっている層から税金をもうちょっといただくしかない。票を意識して増税問題を話さずに福祉を拡大するすることなど長続きしない。国民に正直に話をすべきだ」
これを機に他の閣僚からも「増税論」が相次いだという。
実は、前日発表になった「5カ年計画」には、福祉や社会保障、少子高齢化、雇用対策などが「てんこ盛り」になっている。
5年間でこれらの政策を実行するには、178兆ウォン(1円=10ウォン)の予算が必要だ。これについては、税金徴収の漏れを改善することなどや歳出の圧縮などでまかなうとある。
「増税」については、まったく触れていない。金東兗副首相も、「財源問題」については慎重な発言に終始していた。
これに対して、金富謙長官が、「財源に触れないのは無責任だ」という「正論」を主張したのだ。この金富謙長官の発言が、この日の午後、さらに大反響を呼んだ。
同じ日の午後、今度は青瓦台(大統領府)で、大統領、政府、与党代表などが参加した「国家財政戦略会議」という別の会議があった。