食の世界でも勢力拡大の人工知能、その活用法とは?

作物を仕分け、加工作業を代替、レシピを開発

2017.06.16(Fri)漆原 次郎

 まず人手により仕分けされたキュウリの写真を1枚ずつ撮影し、これを人工知能に学習させる。学習した人工知能は、テーブル上のキュウリを撮った画像から、キュウリの等級を自動判定する。ディープラーニングの部分には、グーグルが一般利用向けに公開する機械学習ライブラリー「テンソルフロー」を利用。現在は試作3号機を開発中だ。

試作中の「自動きゅうり仕分け機」。テーブル上の各キュウリが等級分けされたところ。(写真提供:小池誠氏)
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 総務省の「次世代人工知能推進戦略」では、農林水産分野での人工知能活用イメージとして、第一に、生産する作物や時期、出荷ルートなどを生産者にアドバイスし、最適な生産サイクルを実現することを描く。ほかに、新品種の効率的な開発や、さらに将来的には、高品質な農作物をどのような環境でも確実に生産させることなども描くが、やはり直面している人手不足の課題こそが、人工知能普及の牽引力となるだろう。

加工作業は「代替」の有力候補――食品業

 食品業界では、食品加工や食品製造において人工知能が本格的に普及していくという見方がある。人工知能の画像認識による選別作業のほか、動作の習熟による食品カットや皮むきの自動化、さらに高度な計画立案を伴う工程の自動化などが目されている。

 野村総合研究所が2015年12月に示した「人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業」でも、水産ねり製品製造工、製パン工、製粉工、惣菜製造工、めん類製造工と、食品加工業が並ぶ。だが、食品加工に人工知能が活用されている事例は企業秘密もあってか、まだなかなか見られない。

 サービスやマーケティングでは、三菱食品の存在感が目立つ。情報技術ベンチャーのカラフル・ボードが開発した人工知能を活用してのマーケティング事業を進めている。「生活者の感性(嗜好)、消費行動に関する膨大な情報を理解・学習し、最適な情報を提供する」(三菱食品)という。マーケティングで重要なレコメンド(客の嗜好に合った商品のおすすめ)能力については、「人間が想像できない複雑なロジックを独自に作り出す」(同)ともしている。

 同社は人工知能の活用例として、製造業の顧客に商品企画やマーケット分析データを提供したり、小売業・飲食業の顧客にレコメンドデータを提供したりといったモデルを掲げる。

 顧客などの生み出すデータを人工知能が分析し、マーケティングに生かす形のサービスは、既に日立など先駆的な企業で始まっている。食品業界でも「人工知能を導入して利益率が実際に高まった」という事例が社会で多く聞かれれば、追随して導入検討をする企業は増えるだろう。

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