これまで2回にわたり、「2016年度 中国ベンチャー市場の10大ニュース」をお伝えしてきた。
「配車アプリ(神州専車)の世界初上場」や、「物流企業(中通)のNASDAQ年間最大規模上場」から、「テンセントの13年で275倍の大躍進」「日本で破産した本間ゴルフの香港再上場」まで、中国ベンチャー市場の「躍動感」と「懐の深さ」を少しでも感じていただけたのではないだろうか。
(第1回)香港で上場、あの本間ゴルフが中国で復活していた
(第2回)宅配が爆発的成長の中国、2016年米国最大IPOも
今回からは、いよいよ「中国ベンチャー市場を読み解く6つのキーワード」として、Legend Capital 朴パートナーが提起する6つの視点から、中国ベンチャー業界の活況の背景にある要因を、徹底解明していきたい。
1つ目のキーワードとなる今回は、「(1)継続的なスーパースターの誕生」である。
(出所: Legend Capitalとの討議よりDI作成)
中国ベンチャー市場を読み解く6つのキーワード
(1)継続的なスーパースターの誕生
・継続的なスーパースター企業の誕生
~1カ月に1つ誕生するユニコーン
中国では、2000年代から毎年、企業価値10億ドル(約1100億円)以上のスタートアップ企業、いわゆるユニコーン企業が持続的に輩出されている。
具体的には、2006年から2015年までの10年間に、136社ものユニコーン企業が誕生した(下のグラフ)。世界金融危機が中国にも波及した2008~2009年と、O2Oバブルがアプリ企業の多産多死を招いたスマートフォーン黎明期の2013年には落ち込みを見せたものの、全体としては年平均10社超のペースだ。言い換えると、実に「1カ月に1社」ユニコーンが誕生していることになる。
設立が2014年以降、すなわち、創業3年以内にユニコーン化した企業が50社(!)近く存在しているスピード感にも、驚かされる。
(出所: CBInsights、中国科技部「2016年中国ユニコーン企業発展報告」、Legend Capital提供資料よりDI分析)
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これらユニコーン136社の中で、大手に属さない独立系として創業されたものが100社(Exit済を除くと92社)あり、過半数を占める。一方で、バイドゥ、アリババ、テンセント、360、楽視(LeEco)といったネット系大手のスピンオフ創業・育成先からも36社が誕生し、特に直近1~2年で急増傾向にあることは注目に値する。
(注) ユニコーン企業の本来の定義に従うと「未上場企業」のみが対象となるが、本記事では企業価値10億ドル以上の案件の誕生ペースを把握することを目的とし、「10億ドル以上でIPO/Exitされた案件」も可能な範囲で追加した(「IPO済」で記載している8社)。