ニューヨーク証券取引所。2014年のアリババ上場から2年、中国EC業界が育てた2016年米国最大IPOとは?(出所:Wikipedia

 前回(「香港で上場、あの本間ゴルフが中国で復活していた」)は、「2016年度 中国ベンチャー市場の10大ニュース(前編)」として、5本のニュースをご紹介した。配車アプリのような新規産業もあれば、タイヤのような伝統産業もあり、また「中国発グローバル」や「海外ブランド・技術導入」といった双方向のクロスボーダーも見られた。そして、前半最後を締めくくるニュースとして、テンセントがアジア最大の時価総額企業になったことにも触れた。

 今回は、後編として残り5本のニュースを見ていくことにしよう。

2016年度・中国ベンチャー市場の10大ニュース(2)後編

【ニュース その6】
 中国配車アプリ上位2社の滴滴出行(Didi)とUber Chinaが合併

 前回、高級車セグメントの配車アプリ「神州専車」が、世界に先がけて株式上場したとご紹介した。その傍ら、マスセグメントの配車アプリ市場においては、さらにダイナミックなドラマが展開されていた。そう、上位2社「滴滴出行(Didi)」と「Uber China」の合併である。合併後の企業価値はUSD35bn(4兆円弱)に達すると評価されているこのニュース、ご存知の方も少なくはないだろう。では、この大規模合併はどのようにして行われたのだろうか?

 背景として、中国における配車アプリは、モバイル決済・トラフィック獲得のために、テンセント(滴滴Didiに出資)とアリババ(快的Kuaidiに出資)が代理戦争を行う主戦場であった。しかし、両社のモバイル決済登録が一巡した2015年2月には、代理戦争も終結せんとばかりに両社は合併。シェア85%の滴滴出行が誕生し、出血競争は幕を閉じたかに見えた。

 そのような中、滴滴出行に激しい出血競争を仕掛けたのがUber Chinaである。結果、業界は再び血で血を洗う争いに突入。両社の年間損失額は、2015年に滴滴出行1700億円、Uber China1200億円と言われており、実に年間3000億円もの投資家の資金が流血していたことになる。そして、滴滴出行が新たにUSD7.3bn規模(約8000億円)の資金調達を行うにあたり、投資家が両社の更なる出血競争を懸念し、合併の必要性を提起するに至った。

“血で血を洗う争い”を繰り広げていた「滴滴出行(Didi)」と「Uber China」が合併する。滴滴出行の程维CEOとUberのトラビスカラニックCEO(右)
「滴滴出行(Didi)」と「Uber China」の合併前の状況(上)と、合併スキーム
(出所: Legend Capital提供資料)