連載の流れとしては「受験にスマホを持ち込ませて意味があるか?」という問いや、派生して「将棋に見る人材育成」などの話題を記したいところなのですが、より大本に直結する報道がありましたので、先にそちらに触れたいと思います。
米大統領は6月1日にホワイトハウスで会見して、地球温暖化対策で国際的に締結されている「パリ協定」から米国が離脱する旨を発表しました。
直ちに世界各国から矢の非難を浴びると同時に、米国内からもニューヨーク州、カリフォルニア州、ワシントン州など有力州知事の表明として独自に地球温暖化対策に取り組む米国内連合を結成するなどの報道が相次ぎました。
この問題の意味を3つほどの異なる観点から考えてみたいと思います。
よくよく振り返ってみると、各州の自治が尊重されている米国で、あえて連邦政府の方針に反していくつかの州が独自行動に出るというのは、この150年来ほとんどなかったことではないでしょうか。
正確には米国史専門家に伺うべきでしょうが、南北戦争の終結後、フロンティアが消滅して米国が太平洋進出した1890年代末期、債務国から債権国に転じた20世紀初、そして第2次世界大戦後の米ソ両大国冷戦体制・・・と、このように分かりやすい「米国の分裂」は大文字の歴史に見当たりません。
実のところ、1861年、米国北部の工業化と商工業育成念頭の保護貿易推進に対して、南部諸州が奴隷制度を保持するプランテーションとそれに基づく低価格自由貿易を主張して叛旗を翻すディキシーランド「アメリカ連合国」設立以来の分裂兆候になっているのかもしれません。
これが基で米国は「南北戦争」(1861-65)に突入、ここで自動重火器を用いた大規模作戦が初めて展開し、19世紀後半以降「世界大戦」の軍事産業的な背景が整ったという歴史的な経緯がありました。
国が割れるというのは衰亡の象徴的出来事で、現在の米国政府が米国1カ国に話を限っても、国を阻喪している可能性を雄弁に示しているように思われます。
カリフォルニア州は連邦政権と無関係に中国と協力して環境問題に取り組んでいく姿勢を明確化しており、これらが非関税障壁、貿易問題を筆頭に、現実の収支に直結していくだろうことも、火を見るより明らかです。
問題は複雑かつ多層的ですが、今回はまず(1)地球温暖化の観点から米国の突出した地球環境汚染の度合いを確認し、追って(2)科学的事実軽視の観点、(3)世界統治のシステム変容の観点から、ごく簡単に事態をスケッチできれば、と思っています。