大統領選挙期間中、エマニュエル・マクロン氏のイメージは、笑顔を絶やさない「理想的なお婿さん」だった。だが、大統領就任直後に取った行動は、そのイメージを打ち壊すものだった。マクロン氏が見せたのは、「三軍の長」であることを前面に押し出した“タカ派”とも言える強い大統領の顔だった。
フランスの新大統領はエリゼ宮(大統領府)での就任式を終えると、儀仗隊に警護されながら、オープンカーに乗ってシャンゼリゼ大通りを凱旋門に向けて行進する。そして、「三軍の長」として、凱旋門の下にある「無名戦士」の墓に点火する習わしとなっている。
第五共和制発足(1958年)以来、将軍でもあった初代のドゴール大統領を含め、歴代の大統領が乗るオープンカーは大統領専用の大型乗用車だった。ところが、8代目のマクロン新大統領が乗ったのは、迷彩色も鮮やかな軍用車だった。しかも、マクロン氏は軍用車の上に仁王立ちで全身を見せていた。狙撃の危険を顧みない“勇者”ぶりに多くの人が驚かされた。
前線を訪問し兵士を激励
マクロン氏は、次いで発表された組閣名簿でも、タカ派ぶりを見せつけた。歴代政府が使っていた「国防相」の名称を、通常は戦争中に使用される「軍事相」に改称したのだ。